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コールセンターAI

AIコールセンターと呼ばれているものは、4種類ある

電話の一次受付、AIからの督促電話、オペレーター画面の回答候補、通話記録の自動作成。この4つはどれも「AIコールセンター」の名前で売られていますが、効き方はそれぞれ異なります。自社の困りごとがどれに当たるのか、どこから入ると失敗しにくいのかを書きました。

ヘッドセットを着けてコンピューターに向かうコールセンターのオペレーターたち
Photo: AI25.Studio / Pexels

かかってきた電話の一次対応をAIがこなす。支払い確認の電話をAIがかける。オペレーターの画面に回答候補が出る。通話の要約が自動で残る。この4つは、どれも「AIコールセンター」の名前で売られています。呼び名が同じだけで、解決する困りごとはそれぞれ別です。だから製品名から調べ始めると、別物どうしを並べて比べることになります。検討が早いのは、逆の順番です。自社の困りごとを起点に、該当する種類へ絞り込みます。

困りごと AIを導入する業務 AIがすること
夜間や繁忙期の電話を取りこぼす 受電 話し言葉での一次受付
督促や予約確認の電話に人手を割いている 発信 確認・案内の電話をかける
新人の応対が安定せず、熟練者に負荷が寄る 応対支援 文字起こしと回答候補の提示
応対後の記録づくりに時間を取られる 後処理 記録・要約の自動作成

上の2つ(受電・発信)は、人が対応する電話の件数を減らします。下の2つ(応対支援・後処理)は、電話の件数は変えずに、1件ごとの負担を軽くします。効き方が違うので、以下では種類ごとに「効く条件」と「導入前に決めること」を見ていきます。

受電: 効くのは、定型の用件が入電の多くを占めるとき

番号をプッシュして選ぶIVRの代わりに、話し言葉で受けるボイスボットを置く構成です。「ご用件をお話しください」に「引っ越したので住所を変えたい」と答えると、AIがそのまま変更手続きを案内します。

導入前に決めることは2つです。どの用件をAIで完結させるか。完結できない用件を、どの時点で人に渡すか。この線引きの材料は、用件別の入電集計です。住所変更や営業時間の案内のような定型の用件が多数を占めるなら、受電の自動化は効きます。全用件をAIで受ける前提にすると、定型から外れた通話で止まります。ボイスボットがどの段階でつまずくかは ボイスボットの中身は、4つの技術のリレー に書いています。

発信: 効くのは、同じ内容を相手を替えて繰り返すとき

支払いの確認、予約の前日確認、配送日の調整。台本を固定できる電話は、かける側の自動化に向きます。使う技術は受電の自動化と同じですが、発信に固有の設計が2つ加わります。呼び出しに応えた相手が人か留守番電話かをどう見分けるか。AIであることをどう名乗るか。この2つの設計は AIからの電話は、AIが受ける電話と何が違うのか に書いています。

応対支援: 効くのは、用件が複雑で自動化しにくいとき

用件が複雑で、受電の自動化が難しい。そういう窓口に向くのが、応対を置き換えずに人を支える種類です。通話をその場で文字に起こし、内容に合った回答候補や手順をオペレーターの画面に出します。用件の複雑さを選ばず使えます。AIの出力がそのまま顧客に流れることはありません。読み上げるかどうかは、画面を見たオペレーターが決めます。

効果は文字チャットの顧客応対で測定されていて、解決件数の増え幅は経験の浅いオペレーターほど大きいという結果です[1](電話応対での同様の測定は、公開文献では確認できません)。新人が多い窓口ほど、この効き方の恩恵は大きくなります。測定の数字と、人手不足のどこに効くのかは コールセンターの求人倍率は1を切っている。それでも人手不足が続く に書いています。

後処理: 迷ったら、ここから始める

応対のあとには、通話記録と分類の事務が残ります(アフターコールワーク)。文字起こしから要約と分類を自動で作れば、この時間を直接削れます。

どれから入るか迷うなら、最初の候補は後処理です。理由は失敗の被害が小さいことです。出力を顧客が聞くことはなく、間違いは人が直してから確定できます。既存の電話設備や応対フローも変えずに済みます。ここで文字起こしの精度と運用の感覚をつかんでから、受電や応対支援へ広げる順番が組めます。

どの業務に導入しても、残る限界が4つある

種類を選んでも、AIの応対には共通の限界が残ります。電話の音声は音の情報が削られていて、聞き間違いが増えること。AIがもっともらしい誤りを作る性質は消えないこと。話し終わりの判定を誤って、会話のテンポが噛み合わないこと。処理を順に通るぶん、返事が遅れること。それぞれの理由は 電話の音声認識はなぜ聞き間違えるのか自動応答のAIは、言ってはいけないことをどう避けているのかAIとの通話はなぜ会話が噛み合わないのかAIの声は自然になったのに、なぜ返事は遅いのか に分けて書いています。テンポの問題については、相手の声を聞きながら話せる対話の研究が進んでいます[2]。いま選べる製品では、この4つの限界を前提に置くことになります。

限界が残る以上、「AIで全部受ける」計画は、定型から外れた通話のところで行き詰まります。定型で件数の多い用件から切り出して、例外対応と個別の判断を人に残す。この分担が、4種類のどれを選んでも出発点になります。

検討の最初の一歩は、製品カタログではなく自社の入電データです。用件別に数えて、定型かどうかで分ける。この集計だけでも、冒頭の表のどの行から当たるべきか、見当がつきます。TARVOでは、この切り分けの調査から音声AIの開発までを受託で承っています。詳しくは AI受託開発 をご覧ください。

参考文献

  1. Generative AI at Work(顧客サポート5,172人での生成AI支援の効果測定)
  2. From Turn-Taking to Synchronous Dialogue: A Survey of Full-Duplex Spoken Language Models
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