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コールセンターAI

音声合成の読み間違いは、辞書で直るものと直らないものに分かれる

電話番号や金額などの数字を音声合成が読み間違える理由と、辞書登録の限界、発注前のデモで確認する方法を整理します。

木のテーブルに置かれたスマートフォンの数字入力画面
Photo: Alexey Demidov / Pexels

音声合成が数字を正しく読めるかどうかは、数字の見た目だけでは決まりません。同じ数字の並びでも、年なら年として、電話番号なら一桁ずつ、金額なら「千二百…」と位を付けて読みます。どの読み方をするかを取り違えると、声はなめらかなまま、違う情報を伝えてしまうことがあります。この記事では、数字が何を表しているかの種類を「類型」と呼びます。

TARVOの音声合成検証では、会社名や商品名のような固有名詞は、辞書に登録すれば直りました。ところが、電話番号や契約番号のように毎回値が変わる数字は、辞書に並べても直りませんでした。発注前のデモでは、自社の原稿に出てくる種類の数字をそのまま読ませて確かめるのが確実です。

なぜ同じ数字の並びで読み方が変わるのか。辞書登録で直らないのはなぜか。発注前のデモでは何を確かめればよいのか。この3つの順に見ていきます。

なぜ同じ数字列でも読み方が変わるのか?

数字の読み方は、その数字が何を表しているかで変わります。音声合成の手前には「テキスト正規化」という処理があり、数字や日付を読み上げ用の言葉に置き換えます。この処理を扱った研究では、数字の読み方を「数量として読む」「一桁ずつ読む」などに分け、どれを使うかは数字の類型で決まると整理しています[1]。

見た目が同じでも、正解は一つではありません。検証では、年号が一桁ずつ読まれる一方で、ハイフン付きの電話番号が金額のように位を付けて読まれました。どちらも類型の取り違えです。具体的には次のような形です(番号と住所は説明用に置き換えた値です)。

表記 正しい読み 起きた誤り
年号「2026年」 にせんにじゅうろくねん にーぜろにーろくねん(一桁ずつ)
電話番号「0120-345-678」 ぜろいちにーぜろ、さんよんごー、ろくななはち ひゃくにじゅう…(位を付けて読む)
番地「緑が丘3-8-15」 さんのはちのじゅうご 電話番号と同じ字面。読み分けが要る

同じ「数字-数字-数字」でも、番地なら「の」でつなぎ、電話番号なら一桁ずつ読みます。見た目だけで読み方を一つに決めると、どちらかが崩れます。出典[1]がニュースや不動産広告などを調べた範囲でも、よく出てくる数字の類型は文書の種類によって違いました[1]。

困るのは、読み方の癖ではなく、伝わる内容そのものが変わる場合があることです。読み誤りには、言い方が不自然でも意味は伝わるものと、別の数を伝えてしまって聞き手が気づきにくいものがあります。2019年に検証された研究用のニューラルモデルでは、後者がときどき起き、モデルだけに任せると、いつ起きるかを予測して防ぐのが難しいと報告されています[2]。

だから発注側が最初に決めるのは、「数字を読めるか」の一項目ではありません。まず、自社の原稿に出てくる数字を用途ごとに書き出します。そのうえで、用途ごとに正しい読み方を決めます。

辞書登録で直らないのはなぜか?

辞書登録が向いているのは、あらかじめ全部並べられる言葉です。実測では、固有名詞や商品名、型番の読みを辞書に入れると読みが直り、合成モデルを替えてもその効果は残りました。辞書などの前処理は、モデルとは別に持ち続けられる資産になります。

電話番号や契約番号は毎回値が変わるので、全部を辞書に入れることはできません。そこで、数字の並び方と、近くにある「番号」「TEL」「〒」などの文字から類型を判定します。研究でも、大きな数や学習例の少ない表現は読みを誤ることがあり、前後の文脈に引きずられて別の読み方に偏ることがあると報告されています[2]。別の研究では、対象を特定の類型に絞り、規則で読み方を制限する方法が試されています[3]。

入力の書き方を一律に変えても、類型の判定の代わりにはなりませんでした。全文をかなにすると、辞書にない英字の読みが崩れて誤りが増えました。数字を漢数字にすると、金額や数量は良くなったものの、契約番号や電話番号まで位を付けて読むようになりました。どの数字を位で読み、どの数字を一桁ずつ読むかは、書き方を変える前に決めておく必要があります。

数字だけをカナにする方法も、別のところが崩れました。日本語では、数字と助数詞(「本」「人」など、数の後ろに付く言葉)が組み合わさると、音が濁ったり(連濁)、「っ」が入ったり(促音)します。この変化は数字と助数詞の両方で決まるので、二つを切り離して処理すると読みを誤ることがあると報告されています[4]。自社検証でも、数字だけを先にカナにすると、金額や本数、割合の読みが崩れました。崩れ方は、出典[4]が挙げる次の例と同じ形です。

表記 正しい読み 数字と助数詞を切り離した結果
1本 いっぽん いちほん
2人 ふたり ににん

自社検証では、固有名詞のように並べられるものは辞書に入れ、値が変わる数字は規則で類型を判定しました。助数詞が付く数字は切り離さず、既存の日本語テキスト解析器(文章を読み方に変換する仕組み)に任せました。この分担で、数字に絞った評価文のうち、辞書だけでは残っていた誤りがなくなりました。発注側も、辞書に入れれば済む項目と、類型の判定が要る項目を分けて確認します。

発注前のデモでは何を確かめればよいのか?

発注前のデモには、よくある例文だけでなく、自社の原稿に出てくる種類の数字を入れます。普通の文章がなめらかに読めても、電話番号や金額が正しく読めるとは限りません。研究でも、全体の正解率が高いモデルが、数字や電話番号といった類型ごとに見ると成績が違うことが報告されています[2]。

検証では、識別番号・番地・金額・日付を含む文を決めておき、対策の前後で音声を聞き比べました。識別番号には電話番号と見積番号を、日付にはスラッシュ区切りを使いました。年号を一桁ずつ読む誤りは、聞いた人に「人間ではない」とすぐ伝わる致命的なものとして扱いました。数字の読み誤りは、原文が見える人にはすぐ分かります。一方、原文が見えない人は、誤りに気づかないまま聞いてしまうおそれがあると指摘されています[3]。

デモの原稿は、本番で使う数字の種類を一つずつ含むように作ります。たとえば次のような文です(値は説明用です)。

原稿の例 確かめる型
会員番号は7080-2231です 一桁ずつ読む番号
予約番号RK-58-3306の件です 英字と数字が混ざる識別番号
緑が丘3-8-15までお届けします 番地
合計で3,850円です 金額と助数詞
納品は2026/10/14の予定です スラッシュ区切りの日付

種類ごとに正しい読み方を決め、値を差し替えても同じ規則で読めるかを確かめます。読み以外に導入前に試すことは、AIの声は自然になったのに、なぜ返事は遅いのかにまとめています。

まとめ

音声合成の数字の読みは、見た目ではなく、年号や電話番号といった類型で決まります。検証では、固有名詞のように並べられる言葉は辞書で直し、値が変わる数字は、並び方と周りの言葉から類型を判定する規則で直しました。発注前には、自社の原稿に出る数字の種類を書き出し、その実例を入れたデモで種類ごとの読みを確かめます。普通の文が自然に読めるだけでは、数字を正しく読める保証にはなりません。

よくある質問

音声合成はなぜ電話番号や年号を読み間違えるのですか?

同じ数字の並びでも、電話番号なら一桁ずつ、年号なら年として読むなど、種類によって正しい読み方が違うためです。種類を取り違えると、電話番号に位を付けて読んだり、年号を一桁ずつ読んだりします。

音声合成の数字の読みは辞書登録で直せますか?

固有名詞や商品名のように、あらかじめ全部並べられる言葉には辞書が使えます。電話番号や契約番号のように毎回値が変わる数字は、辞書には並べきれません。検証では、数字の並び方と周りの言葉から種類を判定する規則で読みを直しました。

発注前のデモでは、どのような数字を読ませればよいですか?

自社の原稿に出る電話番号、契約番号、番地、金額、日付、年号を使います。それらを含む文を決めておき、値を差し替えても正しく読めるかを聞き比べます。

参考文献

  1. Sproat et al. - Normalization of non-standard words (Computer Speech and Language, 2001)
  2. Zhang et al. - Neural Models of Text Normalization for Speech Applications (Computational Linguistics, 2019)
  3. Sproat & Jaitly - RNN Approaches to Text Normalization: A Challenge (arXiv, 2016)
  4. Koriyama - Benchmarking Large Language Models for Grapheme-to-Phoneme Conversion: A Japanese Case Study (arXiv, 2026)
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